バーゼル7:47発のECに乗ってオーストリアのブレゲンツへ向かう。10:55着。ブレゲンツはボーデン湖の東岸に位置し、ドイツ、スイスとの国境にもほど近い。

ボーデン湖。家族づれが多く賑わう。雰囲気は横浜の山下公園みたい。

ブレゲンツ美術館(Kunsthaus Bregenz ,1997)。ピーター ズントーの初期の代表作の一つ。今日はこの建築を見るためだけに電車に3時間揺られて来ました。ボーデン湖の横を走る幹線道路に引きを取らずに建っています。

幹線道路からの騒音を遮断するために全身が磨りガラスで覆われています。ガラスは平滑な一面ではなく、一枚ごとに段差がついていて光の反射によって表情がつけられている。

幹線道路とは反対側(南側)はゆったりとしたスペースが取られていて、旧市街側に開かれています。にしても人がまばら。

いざ中へ。・・・玄関ドアが開かない。なぜ。玄関ドアには張り紙に赤い文字。

玄関ドアに赤い文字の張り紙といったら、何語で書いてあろうが、たとえ読むことができなかろうが、大体想像がつきます。

そう、休館。

やってしまった。察するに展示替えのため、あと1週間は開館しないようだ。さすがに1週間は待てない。これまで順調に見たい建物は見られていただけに、初めて訪れた建物を見逃すことになってしまい呆然と玄関前で立ちつくしてしまう。

すると中から男性の人影が。

ガチャ。

なにしてんの?的なことを話しかけられたため、ここぞとばかりに我々は日本から来た旅行者であること、ピーターズントーの大ファンであること、今日はこの建物だけを見るためにバーゼルからやって来たことなど、あらん限りの言葉を尽くす。

すると、

「1階だけなら見てってもいいよ。」

とのお言葉。

男性は次回の展示のための準備をされている方らしく、事もなげに我々を内部へ招き入れてくれました。

過剰な感謝、余り長居はしませんからということを男性に伝えて、見学を開始。

コンクリートの壁と天井、壁は一面ごとに1箇所の開口、黒っぽいテラゾ床、以上。というシンプルな一室空間。ワンフロアは22m四方で、天井高さはおよそ5m弱。

コンクリートの天井のシンプルさを邪魔しないように天井から吊るされた照明。

我々の足音だけ響く館内。硬い材料だけで作られているので音の反響は少し気になるところ。

地下へと続く階段。行きたい衝動に駆られるものの、見学を許されているのは1階のみ。ぐっとこらえる。良き旅行者であらねばならない。

床とFIXガラスとの取り合い。床とサッシとを切り離して、そのスリットから空調をしている。ガラスはサッシとツライチで納めるためにサッシの厚み分が削られているのはコロンバ美術館と同じ納まり。

本当はこの建築の真髄といえる2階以上のガラス天井を見てみたかったものの、潔く男性にお礼を言ってお別れをする。

外に回ってガラスの外壁を観察。ガラス1枚は幅1.7m×高さ2.5m程度で、金物でオープンジョイントされている。

外壁のガラスの内側はこのように鉄骨のフレームで支持されていて、更に内側はコンクリートの壁とFIXガラスで囲われている。内観も外観もひたすらシンプルにまとまっているのも、その中間の部分に技術的な処理が尽くされているからこそ成立しているのだということが分かります。

2時間弱かけてチューリッヒに到着。明日からはイタリアに入ります。