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ヨーロッパ旅行の記録-28日目-ソフィア王妃芸術センター

2日間滞在したバルセロナからマドリードへ向かう。9:00バルセロナ発、11:45Madrid de Atocha 駅着。Air BnBでやり取りしていた方のロフトを訪れる。簡単な説明とおすすめのお店を教えてもらう。

2日間お世話になるロフト。
ソフィア王妃芸術センターを訪れる。今日は休日で美術館が無料とあって、かなりの人出。小雨の降る中、しばらく並ぶ。
パブロ・パラズエロ
フランシス・ベーコン

遂にゲルニカを見ることが出来た。人間と動物の叫びが聞こえてくるよう。対象を複数の視点から捉えて3次元を2次元に落とし込むのがキュビズムの手法であるため、透視図法ではありえない面が表現される。しかし、このありえない画面が表現できることこそが人や動物の究極の苦しみをテーマとするこの作品に結実したのだと思う。エスキス、制作過程の展示もよかった。感激。ちなみにピカソとガウディは仲が悪かったらしく、ピカソの描く画面からはガウディの作品は消去されていたとのこと。

ジャン・ヌーベルの新館を見て回る。
やはりジャン・ヌーベルは庇が好きなんだな。我々が入った本館正面入口は庇がついていなかったため、濡れながら並ぶしかなかった。この増築部分の入口はしっかりと庇が架かっていて濡れることはない。日本とヨーロッパの古い建物はそこが最も違う点ではないか。ヨーロッパは宮殿からアパートまで、軒下空間というものに乏しい。
光沢のある天井面が向かいの街並みを写し込む。
夕飯は教えてもらったスペイン料理店「Taberna Maceiras」へ。どれも日本人好みの味付け。
タコのリゾット
ズッキーニ、ポテト、豚肉の塩焼き
マテ貝のガーリック焼き

ヨーロッパ旅行の記録-27日目-サグラダ・ファミリア

早朝、グエル公園へ地下鉄で向かう。地下鉄Catalunya駅でスリにあいそうになる。駅職員の女性が何事か言っていたので振り向くと男が私のリュックのチャックを開けていた。一瞬何が起こったのか分からなかったが、次第に怒りがこみ上げて日本語で怒鳴り散らしてしまう。向こうも食って掛かられるとは思わなかったのか、退散していった。なかなか不愉快な一日のスタートを切ってしまった。

グエル公園。
正直に言って昨日のカサバトリョでも感じた意匠過多のガウディに食傷気味だったものの、グエル公園は植栽が豊かで力強い。自然の力に助けられてカサバトリョよりは見ていられた。
バルセロナ美術館は午前のみの開館時間に間に合わなかった。残念。バルセロナに再訪する理由が出来たと考えよう。
14時頃、予約しておいたサグラダ・ファミリアを訪れる。
建設は組積造ではなくRC造に切り替えられ、急ピッチで進んでいる。長い時間を掛けて出来上がった部分と最近できた部分とでは素材感、色味が違ってしまい馴染んでいない印象。急ピッチの甲斐もあってというべきか、2026年の完成が見込まれている。今日は強風のためエレベーターがストップしてしまったので塔に登ることは叶わなかった。2026年以降再訪せねば。
東側は外尾悦郎の生誕のファサード。
生誕の門の登場人物は皆柔和な表情を浮かべており、東洋的な面影も感じる。
蔦が門を覆い尽くす表現。
昆虫や色々な生物が可愛らしく住み着いていて優しい世界を表現している。
対して西側はスビラックスの受難のファサード。最後の晩餐やキリストの磔が表現されている。
彫刻の表現は直線的で鋭角。苦悶や飢餓感が痛いほど伝わってくる。生誕のファサードはアール・ヌーヴォー的で、受難のファサードはアール・デコ的。どちらが優れているということではなく、2人の彫刻家に見合った仕事が与えられ、どちらも我々を深い感動へ連れて行ってくれる。
内部空間。
外部のこてこての装飾に比べて内部の筋張った柱と構造の空間。光に主役を譲ったのだ。

ヨーロッパ旅行の記録-26日目-バルセロナ

Finca Bell-llocからパラモスのバスターミナルまで、前日に依頼しておいたタクシーで移動。9:45パラモス発のバスに乗って10:10にバルセロナ(Barcelona Nord)に到着。

ホテル Izaila Plaza Catalunya
昼食を摂るため外出。サンタ・カテリナ市場まで歩く。エンリク・ミラレス設計。波打つ屋根からカラフルな色彩が見え隠れする。
鉄骨と木のハイブリッドな屋根構造。木の梁は集成材で、成が小さい。曲げの力が加わらないようにピン接合されている。エンリク・ミラレスはこのプロジェクトの途中に亡くなり、パートナーのベネデッタ・タリアブエが引き継いで完成させた。
市場は普段使いの客と観光客とで半々といったいい具合の状態。
市場に併設されたレストラン「La Toma」。
ムール貝の酒蒸し。
カレーライス。どれも私達の口にあって次の日も訪れた。
次に訪れたカサバトリョ。初めてガウディ建築を体験する。
ファサードは動物の骨や舞踏会でつけるような仮面のようなメタファーにあふれている。
階段室。うねる脊椎。
吹き抜け。
上階ほど窓の大きさが小さくなり、住居部分に入ってくる光量を調整している。
暖炉室の入り口の形状。キノコなのか、男性器なのか。
布を敷いて中央で捻ったような表現の天井。
建具も複雑な形状にも関わらず機能的な問題を感じさせない。
屋上。目に入るもの全てに意匠が込められている。この調子で「考えられていないところがない」状態が続くと、見ていくうちになぜか段々と気持ちが滅入ってしまう。
次に訪れたバルセロナ・パビリオン。カサバトリョとは対極の建築。しかしカサバトリョは1906年、こちらは1929年の完成だから20年ほどしか違わない。
基壇の高さが思いの外高く感じた。その効果もあって、薄い屋根を見上げるアングルとなる。
最近になって、パビリオン内で展示をするようになったらしく、訪れたときは洗濯物が干してあった。訪問者にとってはありがたくない演出だ。
今回の我々の旅行も洗濯物には苦労した。ホテルの窓辺には洗濯物が干せるような仕組みがなく、さらに街並みとしても好ましく思われていない。にも関わらず、近代建築を代表する、最も洗濯物を干してはいけない建築物に堂々と。アイロニーなものを感じて、これも含めて旅なんだな、などと思う。
人物が入っていたほうが写真がよく見えるのは発見だった。
北側の池から南を向く。
オープンジョイントのトラバーチン床のグリッドに乗る十字柱。
南側から。左手はブックショップ。
ブックショップ内のリフトには1、Bの表記がある。基壇の下に降りられるのではないか。色々な情報にあたるも、真偽がつかめない。

ヨーロッパ旅行の記録-25日目-Finca Bell-lloc

ホテルを出発してGirona駅へ。地下のバスターミナルで切符を買って海岸の町Palamosへ向かう。1時間30分くらいでバスターミナルSarfa Terminal Palamósに到着。

ジローナはスペインのカタルーニャ州に属する。国旗ではなく州旗が掲げられていて、民族の独立意識の高さを伺わせる。
パラモスの海水浴場で泳ぐ。4月下旬の海はさすがに冷たい。妻は砂浜に自分で穴を掘って砂浴。
海から上がって昼食。これから向かうホテルが手配してくれるタクシー到着までの時間を過ごす。
タクシーで15分ほど、海から離れて丘に上ってたどり着いたのがFinca Bell-lloc。今日宿泊するホテルであり、RCR Architectsが手掛けたワイナリーが併設されている。
宿泊する部屋はたっぷりとしたスペースがあり、ゆったりと寛げる空間。
スタッフの方がこのホテル一帯の説明をしてくれた。ホテルとワイナリーだけではなく、ブドウ畑やオリーブの農場、イベリコ豚などの牧畜を営んでいる。
迫力を放つオリーブ。
ブドウ畑と右手がワイナリーの入り口。
RCR Architectsによるワイナリー。地下に埋められていて、スロープで下ってアプローチする。
貨物で使われたコールテン鋼を転用して作られた土留め壁。
ワイナリーの入り口。
ワインの栓のためにコルク樫が植えられている。
ワイナリー内部に光を落とすためのトップライト。ガラスがはめ込まれることもなく、地下のワイナリーに雨も降り込む。
これもトップライト。地面が裂けたよう。
地下のワイナリーはかなりの暗さで、手持ちのカメラは役に立たなかった。ワイナリーは常に14℃に保たれるように極力光量を抑えているらしい。
トップライトからの光。
ワイナリーの横のテイスティングルーム。
ジャウメ・プランサ(Jaume Plensa)の彫刻。
Bell-llocのワイン。
自家製のジャム。
イベリコ豚、ワイン、オリーブ、全てこの地で作られた食材。

Finca Bell-llocは単なるワイナリー付きのホテルではなく、農業、畜産などを自らの組織が手掛けることで、循環についての実践を哲学にまで高めていると感じた。また、RCR Architectsの作品によく使われるコールテン鋼は、Gironaの街のそこかしこで目にした。それはこの土地の土の色に合う材料を自然に使っているだけで、決して奇を衒っているのではない。土地に根ざした環境デザインを実践しているだけだという確かさを感じた。

ヨーロッパ旅行の記録-24日目-Restaurant Les Cols

マルセイユからスペインに移動する日。8:01マルセイユ発のAVEに乗り、お昼前にバルセロナの北東に位置する街、Gironaに到着。更に駅の地下から発車するバスに乗り換えて1時間、Olotに到着した。ずっと楽しみにしていたRCR Arcchitectsの建築が見られる。

Olotのバスターミナルから少し歩くと街のインフォメーションセンター(Turisme Olot)がある。ここのデザインも秀逸。Arnau estudi d’arquitecturaという、現地の設計事務所によるもの。
スタッフの方にキャリーケースを預かってもらえないか交渉したところ、快く応じてくれた。Les Colsに行くことを伝えると、楽しんできてねと言われる。
更に歩くこと30分、ようやく今日の目的地、Restaurant Les Colsに到着した。予約していた15時になんとか間に合った。
アプローチ。古い屋敷を改装してレストランに転用している。
エントランス。
エントランスの右手には奥行きのある金色の空間が広がる。
宴席用のダイニングルーム。44席が2列でズラッとならぶ。16mのテーブルはスチールを溶接して1枚もののように仕上げている。
既存の石造りの壁を吸音を兼ねて金色に着彩、その手前にねじり曲げたスチールフラットバーを立て、その間にLED照明を仕込んでいる。フラットバーは50mm、40mm、35mmをランダムに手曲げ加工されている。
厨房の様子も覗ける。こちらはステンレスのシルバー一色。
ワインセラー。
金色一色の空間を抜けると建物の裏側にでる。
奥に進むと見えてくるのがバンケット用の施設。結婚パーティーなどに使われるようだ。
屋根が軽やかに架かった空間。スチールのパイプを架け渡し、重力が作る曲線で出来た屋根。
スチールパイプと透過する屋根材が日差しを柔らかくしている。
所々にビニルのカーテンが垂れていて、スリット状の庭を作っている。光の量が微妙に変わる。
光庭は屋根に溜まった雨水を排出する役割も果たしている。ビニルカーテンをわずかに重ねただけで雨水を防ぐディテール。
30mもの距離を架け渡すスチールパイプの端部はこのようにスチールプレートに溶接されている。500mmピッチのパイプの径は110mm、90mm、70mmを使い分けられている。
発明のようなディテールの数々。自然をよく観察すること、実験と実践を繰り返すことの大切さ。
奥には築山に隠れて厨房がある。
厨房内部も自由に見てまわれる。もっとゆっくり見て回りたかったが、コース料理をあまり遅らせても申し訳ないのでレストランに戻る。
我々が通された席。床がスチールのフローリングというハードさ。

本来なら通常のコースをオーダーしたかったところだけど、食事でまた体調を崩したくなかったので、軽めのコースを選択。これがまた感動的だった。

ソバのクラスト
ソバのカナッペ
ネギの炭天ぷら
Santa Pau産ホワイトビーンズのスープ
生アーモンドのロワイヤル
グリーンピースジュース
グリーンピースのさやに乗せたミント
そら豆、ホワイトアスパラガス、人参、ビーツ
卵とトウモロコシ
そら豆、にんにくの芽のグリーンソース和え
クロスカット火山産スイートオニオン
水耕レタスのグリル
カタラン チーズ
人参のペースト ザラメ焼き
羊のカッテージチーズ

全部で16品。すべての皿が野菜メインで構成されていて、その多彩さは食事というよりひとつの体験だった。一皿ごとの味わいと、それが繋がっていくことの物語性のようなものが感じられた。

OlotからGironaに戻って、ジローナ大聖堂の近くのホテルに泊まる。