リールを出発してロッテルダムへ。

やはりストライキのため当初予定していた電車が運行しておらず、約2時間遅れの出発。現地の人も当惑気味でしたが、旅行者にはとても優しく声を掛けてくれて、変更後の路線の位置を教えてくれました。

ロッテルダム中央駅に到着。プラットフォームがとてもスッキリした印象です。プラットフォームを外したところに二股にした柱を落としている構造の工夫のおかげです。

南向きにものすごい量感で跳ね出す庇。これほどダイナミックな造形でありながら、白木の内装と少し歪んだ鋼板の屋根材が使われていることで温かみがあって気品を感じます。設計はBenthem Crouwel Architects, West 8といったオランダの建築家の協働によるものです。

駅前から続く歩道に並行して、トラム、道路、自転車専用レーン、水路がストライプ状に走ります。整頓されていて、清潔。

↑カフェ デ ユニ(Cafe de Unie, 1925)。J.J.P アウト設計。三原色の要素で外壁を区切って構成している。デ・スティルというオランダ建築の潮流をよく表したファサード。

今日の目的地クンストハル(Kunsthal)に着きました。ロッテルダム中央駅から徒歩で15分くらい。

建物の中にスロープが貫いていて、向こう側まで抜けています。

エントランス。カフェの天井が斜めになっていて、配管や照明器具もむき出しの状態。とても即物的。日本の建築と比べるとだいぶ柱が細いです。

カフェの上階は集会などが開かれるオーディトリアム。座席につけられたスロープがそのまま下階のカフェの天井に現れていることがわかります。

色使いが素晴らしい。スロープを上がって右手に折れると展示室の入り口に至ります。

クンストハルは自前のコレクションがなく、すべて企画展で運営されている珍しい美術館です。今回はハイパーリアリズム展、ディック ブルーナ展の2つ。

まずはホール2のハイパーリアリズム展から。

すべて信じられない精巧さで製作された作品。生身の人間ではなく作品だからこそじっと凝視してしまいます。赤ちゃんの肌の奥行きや老人の皺の連なりを発見して、作り物のなかにリアルなものを見出してしまう。

屋根の構造が特徴的。オレンジ色のスチールパイプは水平ブレースとして機能しているものの、軽快に天井を走っているので構造的な働きをしているとは感じません。

正面右に下っている室内のスロープはホール2の下階のホール1へ行ける。屋外のスロープはアプローチから見えていたもので建物を貫通している。その向こうに見えている道はこれまた建物の下を通過している。つまり、この建物は2本の外部の通路に縦横に貫かれています。そうした複雑な動線とレベル差を建物内に取り込んでスロープを駆使して解決しているのです。なんてアクロバティックな。

スロープを下ってホール1へ。

ホール1でも展示がありました。正面の丸太は作品ではなく建築の一部。丸太を切り抜いて鉄骨の柱にくっつけています。

オーディトリウムに戻ってきました。さらに緩やかな階段を登るとホール3。ディックブルーナ展はこちら。

展示のタイトルは「The Dark Side Of Dick Bruna」。ブラックベアシリーズが中心の企画展でした。かわいいだけじゃないデイックブルーナ。でも結局かわいいか。

カフェの様子。閉館の時間が迫ってもみなのんびり。

外に出て、スロープを登り切ります。

建物の南側にでてきました。材料が多彩に使い分けられています。高価な材料をあえて安っぽく使っているのがなかなか挑発的。左奥の斜めの床の部分がオーディトリアム。その手前が建物を貫くもう一つの通路です。

クンストハルを後にします。コンセプト、動線、構造、素材、建築のすみずみまでアイデアに溢れていて刺激に満ちている。まだまだ滞在していたかった。

クンストハルを離れてホテルにチェックインしてから訪れたマルクトハル(Markthal)。設計はMVRDV。外観は馬の蹄のような形をしています。この漫画っぽい曲線といったら。

側面は雰囲気の良い集合住宅になっているからまた驚き。バルコニーでくつろぐ人がいたり、植木鉢が置かれるなどして生き生きと使われています。

馬の蹄の中は大きな吹き抜け空間になっていて、世界各国の料理が提供されるフードコートです。鮮やかな色で食材や昆虫が描かれています。

これだけ大きな面積のガラスでありなから高い透明度があります。ガラスの室内側に縦横にスチールロッドを張ることで支持していました。

今日の旅程はこれでおしまい。