ファン・ネレ工場を後にしてユトレヒトへ。ロッテルダムからは高速列車SPRINTERで1時間ちょっと。
ユトレヒト駅近くからバスに乗って20分くらいでシュレーダー邸(Schröder House)に到着。

南側からの外観。自転車がひっきりなしに横切っていく賑やかで日常的な住宅地の街区の南東角に建っています。小さい小さいとは聞いていたものの、本当に小さい。高さが抑えられていて隣の3階建連続住宅の2階窓くらいの高さで収まっていることがわかります。

南東から。基本的には隣の建物と同じくレンガ造の壁と木造の床組でありながら、屋根やバルコニーの支持に鉄骨やコンクリートが使われており、必要な強度に応じた材料が採用されています。

コンクリートのバルコニーとそれを支持する鉄骨の柱。材料同士がぶつかるのではなく、接するように構成されているため力がどうやって伝達しているのかが隠されています。軽やか、浮遊感といった印象を受ける理由です。

 

15人程度の参加者とともに説明やオーディオガイドを聞きながら巡っていきます。2階はリビングダイニングと寝室が3室、浴室があり、引き戸を開けるとワンルームになります。天井に見えている赤、黄、青のレールが引き戸のガイドとなっており、個室に仕切ることができます。あれほど外からのボリュームが抑えられていながら天井の高さは2.5m程度はあるので、屋根の厚さを薄くすることに苦心したことが伺えます。

ガイドの方が日本が大好きらしく、我々を日本人と見るや色々説明してくれました。「こうした引き戸で仕切るのは日本の建築の伝統的な方法でもあるので、シュレーダー邸もよく似ているよね。」と仰っていました。

北東に位置するリビングダイニング。ソファがないため、ほとんどダイニング的な使われ方をしていたようです。深い庇の下にコーナーが開放できる横長窓があるので、多少の雨天でも外の空気を気分良く取り入れることができます。1階のキッチンからはダムウェイターで料理が運ばれました。

階段室を覆うガラス建具も折りたたむことができます。階段室は建物の中央に位置するのでハイサイドライトからの光が建物全体に行き渡ります。

ダイニングの直下に位置する1階のキッチン。奥がメイド室の入り口で、その右手に見えるのがダムウェイター。

1階の南側に面したリートフェルトのアトリエ。直接外に出られるようになっているガラスドアがある。その内側にある木製のドアを閉めるとガラス部分を覆うことができるので防犯を考慮してのことだとわかります。

1時間程度の短い滞在でしたが、実験的でありながら、なおかつここで営まれる生活を慈しむようなアイデアに溢れていることを感じました。デスティルというオランダデザインの潮流を牽引する役割を担う一方で、そんなに肩肘張らずに生活を楽しもうという2つの視線がぶつかることなく同時に実現しているからこそ、完成からまもなく100年を迎える今も新鮮な力を発しているのだと思います。