旅行の始まりからここまで結構なハイペースで移動を繰り返していたので、今日はペースダウン。自転車を借りてベルリンの街をゆっくり散策することに。朝食後、大学で建築を教えてらっしゃる宿主のお宅にお邪魔してベルリン市街のポイントをレクチャーしていただく。新博物館を見ることを一番に勧められたので、ベルリン滞在中には必ず行こうと思う。

ベルリン中央駅で明後日以降の新幹線のチケットを購入後、近くでバイクをレンタル。オランダでは地面に足が届く自転車が無かったため断念した妻でもなんとか乗れそうなサイズの自転車が借りられて一安心。

ベルリンの街は平坦なので自転車移動が気軽にできます。観光スポットには必ずこうしたレンタルバイクが数多く駐輪されています。

ピーター・アイゼンマン設計のハウス・アム・チェックポイント・チャーリー(Haus am Checkpoint Charlie)。メインは集合住宅ですが、一部にベルリンの壁をめぐる資料が展示されている博物館です。建設が1987年なので約30年前の作品。都市から引っ張ってきた2本の軸を建物の中で交差させていて、ファサードにその手法が現れています。

ダニエル・リベスキンド設計のベルリン・ユダヤ博物館(Jewish Museum Berlin)。建物の性格上、周辺は警察が多く少しピリッとした雰囲気。館内に入るのも入念なチェックを受けます。

ジグザクのプラン、外壁に刻まれた開口、うねる床、音が不快に響く牢屋のような部屋。建築に求められる安定性からことごとく逸脱して、不均衡や不安感をあおる。

記憶のヴォイドと呼ばれる吹抜け空間は顔の形をした無数の鉄片で埋め尽くされています。この上を歩いて渡らないと次の部屋に進めないらしい。我々はなんだか気が進まずに引き返してきてしまいました。建築物にもまして、映像や写真などの展示の内容が心に重く響く。

次に訪れたのはMemorial to the Murdered Jews of Europe。日本語にすると、ヨーロッパで虐殺されたユダヤ人の記念碑。これもピーター・アイゼンマンによる2005年の計画。2711個もの石柱がグリッド状に並べられていて、その高さと傾きが微妙に違う。さらに敷地中央がすり鉢状になっているため、歩いていると石の量塊の中に埋もれていくような感覚になります。石は墓標のような、石棺のようなひたすら寡黙で内実のわからない物体。先ほどのユダヤ博物館にあった顔の鉄片にしても、「個」がいかに扱われてきたか、そしてその望みのなさをどうやって人に分からせるかということにアイデアが注がれています。こうした場面にもデザインが果たせる役割って大きいものだと感じました。少し意外だったのが、訪れる人々が石柱の上で寝転がったり談笑するなど、とてもリラックスしてこの場所での時間を過ごしていることです。

最後に訪れたテロのトポグラフィー。ここはナチス親衛隊(SS)や秘密警察(ゲシュタポ)の本部が置かれた地であり、かつ冷戦時代に築かれた壁が今も残る場所です。

のんびりまわるはずがけっこうへとへと。自転車でアパートへ戻る。